髪の毛は勘弁してくれ…
救急処置室に着いて、なにやら、体のあちこちをあらゆる角度から触られた。
例えるならば、海の上に浮かんで、下から無数の手が出てきて海の中にひきづり混まれる感じだ。

看護婦さんが
「服を全部切りますからね、いいですね!」
と、僕に大きな声で言ってきた。老人じゃないから聞こえるわ!と思いながらも、ハイと素直に答える自分に違和感を感じた。(裸になる事がイヤなはずなのに)
答えるか答えないうちにハサミで切られていたけど…

そんな中、横から聞き慣れた声がする。
「由則大丈夫?わかる?ね、しっかりしてよ!」
それは、お袋の声であった。
なんで?こんな早く?お袋がココに居るんだ?
まだ、処置室に入ったばかりじゃないのか?
(入ったばかりと考えていたが、どうやら、意識をなくしていて、かなりの時間が過ぎていたらしい。)
お袋の問いかけに、
ゴメン、事故しちゃったよ、悪いね!
と、謝ったのを記憶している。これには、ある意味があってであるが…
「痛いところは?動く?お母さんがわかる?」
痛いところもないし、感覚もないんだよ!
この言葉を聞いて、お袋は腰を抜かしたように崩れ落ち、つれてきてくれた人に抱えられて控え室の椅子に運ばれていったらしい。
かなりのショックだったのだろう・・・。
兄弟いても、一人息子のようなモノだったからな。

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弟は、産まれて直ぐに「三種混合ワクチン」の性か?脳性麻痺のようになってしまい、殆ど疎通が取れなかったから、僕に対する期待は、結構、大きかったと思う。
その事もあり、好きなように自由にさせて貰っていたから、申し訳ないという事から、直ぐに謝ったんだろうな?
ずいぶん迷惑掛けたからなぁ、ワガママ言い放題でさ、ナニも言う事聞かなくて、勉強はしないし、心配ばかり掛けてた。
「事故だけはしないでね!」
と言われていたな…こうやって、何年かして、事故した時を思い出すと本当に苦労掛けているなと、自分に腹が立つよ。
いまも、好き勝手にやらせて貰ってるな、感謝しないといけないはずなのに…
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また、看護婦さんが、大きな声で
「髪の毛、バリカンで剃りますからね、いいですね!」
と、声を掛けてきた、この問いかけに、
『イヤだ、髪の毛だけは勘弁してくれ…』
「なぜですか?剃らないと処置できないんですよ!」
三日前に、パーマ掛けたばかりナンだ!もったいないじゃないか?絶対イヤだ!
僕のそんな言葉は聞き入れられず、無情にもバリカンは頭を這っていった。
(今、考えれば、ずいぶん馬鹿な理由である。この地域は、中学は丸坊主という規則があり、髪の毛を切られるのに抵抗があったのも事実かな?)
ここら辺から、また、意識がなくなり記憶もない。

ずいぶん記憶しているつもりだが、色々な事が、前後しているんだろうな?
ここら辺は、思い出すのも、そんなにイヤな気はしないが、もう少しした頃を書くのは、自分自身、勇気が要るかもしれないな!
思い出すのがイヤと言うよりも、自分の馬鹿さ加減にあきれるからだ。

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お袋を病院に連れてきてくれた人は、布団の販売員らしい。つまり…当時、流行っていた羽布団の例のヤツである!この事があったカラかは知らないが、羽布団を購入したらしい。
しかし、気が動転していたお袋を送ってくれた事は確かで、高い運賃になったが、ありがとう。
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